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1年10ヶ月で累計販売数100万食を突破した期待の新鋭!新規ビジネス参入の決め手とは!?|GREEN SPOON編
2023.01.16
ファーストペンギンを追え!

1年10ヶ月で累計販売数100万食を突破した期待の新鋭!新規ビジネス参入の決め手とは!?|GREEN SPOON編

ファーストペンギンを追え!…オートミール市場の覇者を目指し、既にビジネスを先行している企業(ファーストペンギン)をオートミールビジネス編集部が取材。彼らはどの角度の視点でこの市場を捉え、ビジネスの参入を決定したのか!?これからオートミールビジネスを目指す全ての経営者、担当者が第一歩を踏み出すために参考となる貴重なインタビューをお届けしていきます。

1年10ヶ月で累計販売数100万食を突破。すでに累計5万人ものサブスクリプション会員数を誇り、快進撃を続けるベジタブル・ワンステップミール「GREEN SPOON」。なぜこれほどまでに注目されているのか!?GREEN SPOON執行役員 小池優利さん、商品企画/開発 具嶋友紀さんのお二人にお話をお聞きしました。

写真左:執行役員 小池優利さん 右:商品企画/開発 具嶋友紀さん

「自分を好きでいつづけられる人生を」をビジョンに掲げ、WEB上で食生活にまつわる選択式の質問に答えると、今どんな栄養が必要なのか?を一人一人にレコメンド。そのデータを元に野菜やフルーツをセレクトし瞬間冷凍された野菜をスープ、サラダ、スムージー等のスタイルで自宅へお届けする。「GREEN SPOON」は、それぞれのライフスタイルにあった食生活に寄り添い、食のセルフケアと豊かな食体験を提供する新しい概念の企業だ。

瞬間冷凍された原料を採用することで、鮮度の高い野菜・果実・肉・魚などの食材の栄養が摂取できること。そして、それらの素材を手軽に時短でおいしく調理できるというスタイルが、多忙な女性や、健康意識の高いお客様から多くの共感と支持を獲得。

創業の年だったにも関わらず、優れたサブスクサービスの表彰を行う「日本サブスクリプションビジネス大賞2020」でシルバー賞の受賞を果たしたことも、同社ビジネスの注目度を示している。

IT業界出身|ミレニアム世代が等身大で考えたGREEN SPOON という食のセルフケアブランド

―編集部:創業のきっかけをお教えください。

小池さん:私は新卒で入社して以来8年間、サイバーエージェントに務めていました。メディア営業や人事など色々と経験しとても充実していたのですが、仕事柄 昼夜問わずのハードワークも多く、1日3食をコンビニのご飯で済ますことも日常茶飯事。不規則な生活が当たり前の生活を過ごしていた中で、常に漠然と身体の健康に不安を感じ続けていました。

そして、30歳を目前にして、なにか新しいことにチャレンジしたいと考えていた時に、前職の同期でもあり創業メンバーのCEO田邉から「一緒に起業しないか?」と誘われたのがGREEN SPOONを始めることになったきっかけです。田邉はサイバーエージェントを退社してからの2年間、様々な国で暮らし、これから自身が展開するビジネスのテーマを模索していました。特に欧米では日本よりもサプリメントの習慣が定着していること、自分で栄養のバランスを考えて健康をケアする「予防医学」という考え方が浸透していますが、日本ではその考えがあまり浸透していない。自分たちを等身大で見つめ直しても「予防医学」は重要なテーマだと考え、焦点を絞り、そこからGREEN SPOONの構想が進み出していきました。

飽食と言われる現代社会。昭和の家族構成は祖父母・両親・子供という3世代が暮らす大家族が多かった時代。その頃は「お母さんの味」である家庭料理が栄養バランス的に、そして経済的にも効率的だった。しかし、高度経済成長を遂げ、平成に入ると少子化、核家族化が進み、少人数のための調理行為は時間的にも経済的にも効率が悪くなり、家庭料理は軽視されていく傾向が強くなった。

当然企業もその時代ニーズを逃す筈がなく、和洋を問わず数々のファーストフードが参入し、コンビニエンスストアの中食は若者達の主食と言われるまでに発展した。しかし、手軽に好きな食べ物を購入することができる一方、偏った食事によって必須栄養素が不足する“新型栄養失調”という問題が蔓延し、それが今日に至っている。このような食の社会問題の解決への期待もGREEN SPOONが注目されているひとつなのであろう。

創業メンバーに食品業界の経験者がゼロ!?常識に囚われなかったことが成功の鍵に

―編集部:事業開始から実際にサービスを開始するまで期間はどれくらいかかりましたか?

小池さん:2019年5月に創業して2020年3月にサービスを開始しました。

編集部:新境地である食品業界への挑戦で、わずか10ヶ月で事業をローンチされている。驚異的なスピードですね。

小池さん:そうおっしゃってくださる方も多いのですが、メンバー全員がインターネット業界の出身で食品業界の経験が全くなく、まっさらの状態から立ち上げなくてはならなかったので、人の何十倍も回り道をしたと思っています。

すべての事を試行錯誤で積み上げていく上で、想定外の出来事が多かったです。例えばITやデジタルの業界では、ウェブサイトやアプリのリリース直前に修正が発生してもデザインの変更対応が可能でしたが、当然ながら食品の商品パッケージは印刷工程があるので、3〜4ヶ月前にはデザインを確定させておかなくてはなりません。私たちの出身元であるIT業界の常識は一切通用しませんでした。

中でも、原料調達や工場探しなど、サプライチェーンの構築が一番大変でした。当初スムージーだけでも25種類あり、原料も61種類とかなり多かったので、OEM製造の委託ができる工場がなかなか見つかりませんでした。アプローチだけでも100社以上にコンタクトをトライしました。

大手の食品メーカーさんだと既存のサプライチェーンがあり、大量生産をすることで価格を下げるという戦い方もできますが、私共は食品業界が当たり前に行なっている仕組みを知らなかった上に、自分たちが本当に欲しいと思える商品を世の中に流通させたかったので、小ロットでラインナップを多くするという、コスト構造としては非効率で、食品業界では考え難いと言われ、険しい立ち上げの経験をしました。

ですが、立ち上げメンバー全員が食品業界に未経験だったからこそ、食品業界の常識に囚われることなく、自分たちが成し遂げたい、お客様視点での商品開発ができたのだと思います。今思い返すと、立ち上げメンバーに食品業界の経験者が0人だったというのは、失敗のようで、ある意味成功だったのだと思います。

―編集部:スムージーだけで25種類。かなり豊富なラインナップですね?

小池さん:最近はパーソナルジムやパーソナルダイエットなど、一人一人に合わせた最適なサービスを提供するパーソナルサービスが世の主流となっています。食も生活スタイルや個々の体質によって異なるので、食習慣のサポートもそれぞれに合ったものをお届けしたいと思いったのがきっかけです。

私共の提供しているサブスクリプションでは、一人一人の身体にあった商品をお届けするために、お申し込みいただく前に3分ほどで簡単にできるパーソナル診断を行なっていただきます。診断結果をもとに、不足している栄養や好みの食材などを分析してメニューの提案を行うのですが、一人一人にあったメニューを提案するには多くのラインナップが必要でした。

パーソナル診断では、生活スタイルに纏わる質問や食生活の特徴、食材の好みやアレルギーについて回答。診断結果に説明文と共にメニューが提案され、一目でカロリーや摂れる野菜の種類を把握することができる。中には「〇〇さんが好きな〇〇が入ったメニュー」と、より個人に寄り添ったコメントも。

トライ&エラーの末に生み出された解決策

―編集部:メニューやレシピはどのようにして開発されたのでしょう?

小池さん:実際に自分たちで様々な食材を組み合わせて、ミキサーで調理して何種類ものスムージーを試しました。飲料製品を製造するためには殺菌条件などが厳しく設けられています。加熱殺菌するために食材を一度温めてからスムージーにしてみたのですが、全く美味しくなくて・・・(笑)

色々と試していくうちに“冷凍の食材”にたどり着きました。当社では「瞬間冷凍」の技術を用いて冷凍された原料を採用しているのですが、瞬間冷凍を行うことで素材の栄養素や味、鮮度を維持。出来合いの商品では製造過程における加熱処理で多くの栄養が欠損してしまいますが、瞬間冷凍することで素材本来の栄養素を最大限に摂取していただけます。

またレシピは全て料理家、管理栄養士監修のもと、栄養価を最大限に摂取できるよう野菜・果物の相性にもこだわり、化学調味料、保存料、合成着色料、合成甘味料も一切使用していません。

サービス開始直後に受けた新型コロナ緊急事態宣言の洗礼を逆境に、コロナ禍がもたらした食生活の変化の波に乗る

―編集部:想定外の試練を幾度も乗り越えられ、いざローンチ。サービスを開始された2020年3月は緊急事態宣言の直前ですが、どのような影響を受けられましたか?

具嶋さん:ローンチに合わせて予定していたPRイベントなどが、全て中止になりました。予想外に露出面が全くなくなってしまったので、SNSで発信したり身内に宣伝して広めたりと、初めの方はかなり泥臭い作業をしていました。

そんな中、武井壮さんが番組MCを務めるTBS「BACKSTAGE」の「食」で世界を変えようと夢見る3つのベンチャー企業を訪問!という企画で取り上げていただいたことで一気に露出が増えました。他にも、有名な著名人やインフルエンサー・テレビ・雑誌等数多くのメディアで発信していただけたことで、徐々に認知度が上がっていきました。

コロナ禍の影響で外食頻度は低下、ステイホームが広がり生活環境に急激な変化が起きました。買い物頻度が下がり、保存性の高い食品が求められる中、運良くも私共の「健康的な食事を自宅に届けるサービス」はご時世に合っていました。

―編集部:緊急事態宣言という予期せぬ事態への直面でしたが、確かにコロナ禍をきっかけに改めて自身の健康や食生活を見直す方は多かった印象です。現在、ピーク時とは状況も変わり、徐々にコロナ前の環境に戻り始めている部分もあります。ポストコロナによる顧客ニーズの変化はありますか?

具嶋さん:さほど、大きな変化は感じていません。あくまでも仮説ですが、コロナ社会を機に変化して、戻るものと定着するものがあると思っております。お客様からは、「コロナを機に働き方が変化した為、外食やお酒を呑みに行く回数が減少した。その分の浮いたお金で、健康的な食生活を送ることに投資しています。」というお声をいただいたりしています。

健康的な食事のお届けだけでなく、たのしい食のセルフケア文化を提供したい

―編集部:現在展開されている商品について詳しくお聞かせください。

具嶋さん:スムージー、スープ、サラダと3つのジャンルをご用意。これまでに合計約80種類の商品を展開している他、スープやサラダと一緒に食べられるパンやおにぎりなどの主食セットも22年11月より展開中です。

―編集部:中でも一番人気のジャンルはどのようなものでしょう?

小池さん:スムージーは元々ご自宅でスムージーを飲む習慣のあったコアなユーザー様が多く、初めてのお客様はスープから試される方が多いですが、みなさん共通して一つのジャンルに絞らず色々と試される方が多いです。

―編集部:GREEN SPOON様ならではの特徴やこだわりとは?

具嶋さん:一般的な類似商品だと、具材とスープを一緒に煮込んでパウチに袋詰めして、ドロドロとした状態のものをお皿によそう商品が多いですが、GREEN SPOONでは濃縮液をキューブ状にしたスープと、ゴロゴロとした大きな野菜を詰み合わせてお届けしています。煮込まずにスープをキューブ状にすることで、フレッシュな状態で野菜をお届けすることができますし、調理される前の具材をしっかりとお客様ご自身で確認していただくことで、どんな食材を使用しているのか把握できサービスの透明性に繋がっています。
また、完全に出来上がっている商品ではなくご自身で一手間加えていただく方ことで、食材への信頼感をより感じていただくことができます。

―編集部:サブスクリプションを採用している理由はありますか?

小池さん:健康やセルフケアは、一時的なものではなく習慣化していただくことが大切です。一度きりで終了せず習慣化していただくために、定期的にご自宅へ商品をお届けすることのできるサブスクリプションを採用して食生活のサポートをさせていただいています。

美味しいだけでは、楽しい食のセルフケアを継続することは難しいので、GREEN SPOONではブランド体験をしていただくことも大切にしています。
箱で届いた瞬間からワクワクしていただけるよう、イラストやデザインに徹底してこだわりました。一つ一つに楽しさを感じていただき、GREEN SPOONを通じて“自分の体を気遣う習慣”が“自分を好きでいつづける”ということに繋がっていただけたら嬉しいです。

コロナ禍で急成長した食品分野「オートミール」について

―編集部:GREEN SPOON様では初期の頃から食材の一つとして「オートミール」を導入されていますが、導入された理由をお聞かせください。

具嶋さん:GREEN SPOONでは現在スムージーの食材としてだけでなく、1食の満足感を強化するために小袋のオートミールを追加したセットメニューの提供も行っております。3ジャンルとも相性がよくご好評いただいているのですが、特にスープとサラダは相性がいいです。加熱調理が入るので、オートミールが水分を吸収してモチモチとした食感になりより食べ応えを感じていただけます。

小池さん:お客様ご自身でオートミールを購入してGREEN SPOONの商品と組み合わせている方も多く、SNSで「GREEN SPOON オートミール」と検索すると、スムージーとオートミールを組み合わせてアサイーボウルにしたり、スープと組み合わせてリゾット風に、サラダに混ぜて腹持ちよくアレンジしているレシピが多く上がっています。
私共のサービスとオートミールが上手くコンビネーションし、気がついたら自然発生していました。現在GREEN SPOONではロールドオーツの1種類のみ取り扱っているので、今後レパートリーを増やしていけたらいいなと思っております。

―編集部:コロナ禍で急成長した食品分野の一つでもある「オートミール」ですが、GREEN SPOON様の考えるオートミールの市場性や将来性についてお聞かせください。

小池さん:オートミールは栄養価が高く保存性にも優れていて非常に扱いやすい食材です。「手軽だけどおいしくて健康的でありたい」というニーズはこれから増えていくと思いますので、ポテンシャルが高くどんどんと伸びていく可能性を秘めていると思います。

駆け抜けるGREEN SPOON、更なる挑戦へ

―編集部:今後の目標をお聞かせください。

具嶋さん:インターネットでサブスクリプションとなると、まずは手軽に1つだけ試してみたいと言うお客様には少しハードルが高く感じるお客様もいらっしゃいます。そのようなお客様の期待にもお答えできるよう、私共のビジョンに共感いただけるような売り場の方とのパートナーシップを拡張して、手軽に一つお試しできるような環境を作りたいと思います。

小池さん:もう一つはアジアに進出してグローバルブランドになることです。そのためにはまず、日本国内で健康で美味しい食事を提供するブランドだと認知していただくことがファーストステップだと思っているので認知拡大に注力して取り組んでいます。

具嶋さん:良いものを適正な価格で販売することは大切です。いくら良いものがあっても、安いものしか売れない状態は生産者含め社会全体を痛めてしまうと考えております。きちんと質の良いものを使用して適切な価格で流通させる。こういった私共の考えに共感していただけるパートナー様とどんどん取り組みを深めていきたいと考えています。

―編集部:これからオートミール事業への参入を考えている方々へ、新境地への挑戦、オートミール事業の経験をされているGREEN SPOON様から、ご経験を元にアドバイスをお願いします。

具嶋さん:新しいことを成すのに勝算はないので、自分のやりたいことをどこまで信じることができるか?が大切だと思っております。勝算が有るか否かではなく、これは成したいんだ!という自分のピュアな気持ちと情熱的に向き合って、新しいビジネスにチャレンジしていただきたいです。

小池さん:自分たちの信じているものが世の中に広まるか、最後は熱意や決意だと思っています。遅い早いというタイミングは関係なく、小さなことでもチャレンジしたいことがあるのなら、素直に自分の心に正直に進んで行っていただきたいです。

GREEN SPOON
公式サイト:https://green-spoon.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/greenspoonjp/
Twitter:https://twitter.com/greenspoonjp

取材・文章/渡辺恵伶奈(Oatmeal BUSINESS 編集部) 取材コーディネート/(兼松株式会社 穀物部) 構成/毛利努(MORRIS STRATEGY & DESIGN CONSULTS,LLC.