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バンドの世界ツアーでヴィーガンカルチャーに魅了され、100%ヴィーガンバーガーでプラントベースフードに革命を起こす挑戦者|Righteous BURGER編
2023.07.05
ファーストペンギンを追え!

バンドの世界ツアーでヴィーガンカルチャーに魅了され、100%ヴィーガンバーガーでプラントベースフードに革命を起こす挑戦者|Righteous BURGER編

ファーストペンギンを追え!…オートミール市場の覇者を目指し、既にビジネスを先行している企業(ファーストペンギン)をオートミールビジネス編集部が取材。彼らはどの角度の視点でこの市場を捉え、ビジネスの参入を決定したのか!?これからオートミールビジネスを目指す全ての経営者、担当者が第一歩を踏み出すために参考となる貴重なインタビューをお届けしていきます。

2022年12月に東京二子玉にオープンしたRighteous BURGER(ライチャスバーガー)。食材は全て植物性のみで作られており、ヴィーガンやヘルシー志向の方から高い注目を集めています。今回は、日本でも気軽にヴィーガンカルチャーを楽しんでもらいたいとプラントベースフードの素晴らしさを啓蒙しているRighteous BURGER代表 山口博久(やまぐち ひろひさ)さんにお話を伺いました。

バンドマンとして世界を回った経験の中で、ヴィーガニズムに目覚めた山口代表。自身の目的のために動物を利用する権利はないというヴィーガン主義がCool(カッコいい)だという文化が若者に浸透していることに感銘を受け、日本でもヴィーガンカルチャーの普及に尽力されています。

“ギルトフリー(罪悪感ゼロ)”がコンセプトのRighteous BURGERは、パティには豆腐や野菜、オートミールを使用し、お肉のハンバーガーと見分けがつかないほどの再現性で、ヘルシーなのに、パンチのある味と食べ応えが、一般的なヴィーガン料理のイメージとは一線を画していると多くの支持を得ています。

昨年は、日本最大級の野外音楽イベント「フジロック」などのイベントにも出店し、行列ができるほどの人気ぶり。コロナ禍の影響を受け、サスティナブルな生活や健康的な食事を意識する人が増える中、日本のヴィーガン市場に革命を起こそうと挑まれています。

世界ツアーで出会った“ヴィーガンカルチャー” Righteous BURGERの挑戦と軌跡

―編集部:お店をオープンされたきっかけを教えてください。

山口代表:バンド活動や飲食店の経験を経て、企業向けの商品開発やコンサルティングをするベンチャー企業を知人と立ち上げました。自分でブランディング・プロデュースをした食事を提供するお店を作りたいという思いもあったので、Righteous BURGERをオープンしたのがきっかけです。

ヴィーガンを対象にする理由は、私がバンド活動中に経験した体験から始まりました。1998年に「Endzweck」という音楽バンドに加入し、世界各地をツアーした経験の中で一緒にツアーを回る海外バンドのメンバーにヴィーガンやベジタリアンの人が多数いて、 彼らと一緒に生活を共にする中で思いやアティチュードは様々ですが、各個人がしっかりと自身のアイデンティティを持って生きている同世代の若者たちの世界観に触れ、強い刺激を受けました。特にアメリカやヨーロッパの若者カルチャーでは、ヴィーガンが深く浸透し、現地のライブハウスやフェスのケータリングでは、ヴィーガン向けの食事が別途用意されているなど、ヴィーガンに対するケアと敬意が明確に存在しています。

当時はアメリカがヴィーガン先進国でありましたが、現在ではイギリスやドイツなどのヨーロッパ諸国がプラントベース市場をリードしていると感じます。ヴィーガンは健康への関心だけでなく、環境問題への意識も高いため、海外ではヴィーガン専門スーパーやレストラン、パブなどが充実しており、ヴィーガンの人々が生活しやすい環境が整っているのです。

2003年頃から頻繁に海外バンドの日本ツアーをアテンドする機会があったのですが、日本ではまだヴィーガン対応の飲食店が少なくアテンド先に困り、自分でヴィーガン料理を作ってあげたりライブやフェスイベントでヴィーガンフードを提供したりすることもありました。そんな現状に課題と責任を感じ、彼らが求めている様なヴィーガンの飲食店は自分が立ち上げるしかないという思いが湧き上がり、2015年歌舞伎町にヴィーガンバーガー専門店 Ainsoph Ripple(2020年に閉店)の店舗立ち上げに関わり、レシピ&ブランディングプロデュースをさせていただきました。調理師免許も無く、特に料理の修行といえる程の事はしたことがないですが、独学でヴィーガン料理を学び、オリジナルのメニュー考案にも自信がもてるようにはなってきていたので、次の新しいアクションを求めていた矢先にヴィーガンの飲食事業に興味をもった方とのご縁があり、今回のRighteous Burgerのプロジェクトが決まり、2ヶ月ほどでゴーストキッチンの宅配専門店をオープンさせました。

―編集部:2ヶ月とは驚異的なスピードですね。なぜゴーストキッチンから始められたのですか?

山口代表:コロナの影響で大変な時期にオープンすることになったため、スモールスタートな方法でリスクを考慮して、ゴーストキッチンの宅配専門店という形態を選びました。
前職でヴィーガンの外国人と多く関わっており、その時の記憶と情報をもとに、需要が高いと感じた六本木エリアを選定しました。

―編集部:コロナ禍に0からのスタート、直面した問題などはありましたか?

山口代表:コロナ禍において、デリバリーの需要が急増しましたが、ゴーストキッチンの宅配専門店として客を集める方法やブランディングの手法については苦労しました。積極的にSNSを活用して店舗情報を発信したり、リピーターのお客様に対して特典やサービスを提供することに注力しました。また、宅配ではなくテイクアウトのオプションもご用意し、お客様のニーズに柔軟に対応するなど、地道な努力と継続的な取り組みをひたすら続けていきました。

ゴーストキッチンと並行して、フェスやSDGs、LGBTQなどのイベントにキッチンカーでも出展し認知拡大の活動を行ったのですが、イベントごとにお客さんの層や反応は全く異なり、これもまたブランディングに苦労。リピートしたいと仰ってくださるお客様にお店の場所を聞かれても、SNSでイベント情報を見てもらうしかなく、やはり実店舗が必要だと感じ、昨年12月に二子玉川に路面店をオープンしました。

―編集部:路面店をオープンされて、ゴーストキッチンやキッチンカーとお客様の層は変わりましたか?

山口代表:二子玉川のエリアは住宅地でファミリーの方が多く、ヴィーガンメニューとしての需要より、フレッシュでヘルシーなものを食べたいと来店されるお客様が目立ちます。これまではヴィーガンの方向けにブランディングをしてきましたが、ヴィーガンをご存知でない方にも、身近に感じ受け入れていただくためにはどうすれば良いのか模索しながらリブランディングしました。

イメージを覆す、至極メニューの誕生秘話

―編集部:数あるヴィーガンメニューの中から、なぜハンバーガーを選ばれたのですか?

山口代表:私が影響を受けた、アメリカンカルチャーやストリートカルチャーというフィルターを通して「カジュアルなバーガーショップ」という形でヴィーガンメニューを発信したいと思いました。カリフォルニアのビーチサイドにいる雰囲気を味わえるよう、世界観や料理の味付けにこだわっています。

プランドベースフードは、味が薄くて物足りないと思われがちですが、Righteous BURGERのハンバーガーは違います。食べ応えがあって、満足感が高く、食後も罪悪感がない“ギルトフリー”を実現しました。意外なことに、40代50代の男性のお客様が多くいらっしゃるんです。昔ながらのジャンクなハンバーガーが好きだけど、健康や胸焼けの問題で食べられないという方が、Righteous BURGERのハンバーガーなら安心して楽しめると仰っていただけるんです。

プランドベースフードに初めて触れる方も多いですが、淡白で素朴な味ではなく、しっかりとした味わいに驚かれるので、ヴィーガンに対するイメージ改革にも貢献できているのではないかと思います。

―編集部:味や素材のこだわりを教えてください。

山口代表:バーガーの味を左右するパティは、特にこだわって作りました。Righteous BURGERの特徴として“野菜”をしっかり使用する事を意識しています。その為、パティにはゴボウやこんにゃく、オートミール、ビーツ、マッシュルームなど、なるべくソイミートに頼らない方法で様々な野菜を混ぜて満足感を出している点が特徴です。こんにゃくも1回冷凍させ、水気を切って撹拌して炒め、口の中に残るビーフ特有の食感を演出しています。

オートミールはつなぎとして“インスタントオーツ”を使用しています。プツプツとした食感が特徴のロールドオーツや、細かく粉砕したクイックオーツなど沢山の種類のオートミールを試したのですが、すぐに水で細かくふやけるものがよかったので、インスタントオーツを採用しました。オートミールといえば、最近話題の米化やオーツクッキーといったオートミールメインの料理が多いイメージですが、今回はあくまで“素材”として使用しています。
オートミールは保水性が高いことから“つなぎ”の役割だけではなく、ふんわりとやわらかな食感も演出してくれるので、よりリアルな肉の食感に近づけることができます。

バンズは国産小麦を使用した天然酵母パンで、黒糖やオリーブオイル、塩などで作られ、発酵には米麹を使用しています。もちっとした食感で表面はカリッと仕上がる事が魅力の一つです。

サイドメニューでは、「ミックスマッシュルームフライ」が人気です。ハワイのファーマーズマーケットで食べた味を再現し、パン粉をつけたキノコと、オリジナル衣を付けて揚げた4種類のキノコをフライし、ランチソースとサウザンソースをたっぷりかけて作っています。キノコの旨みとクリーミーなソースが食べ応えのある人気の一品です。

―編集部:メニュー開発の際に、心がけていることはありますか?

山口代表:メニュー開発をする際は、素材の選定はもちろんのこと、現場でのオペレーションを常に念頭に置いています。以前プロデュースしていたヴィーガンレストランも同様だったのですが、若いアルバイトの方でも安定して作ることができ、負担が少ない調理工程のメニューにしています。こだわりを持って作るのも大事ですが、継続して作れなかったらサスティナブルじゃないので、常に現場のことを考えてレシピを考案しています。ヴィーガンではないお客様もいらっしゃるので、変化球ではないアイスクリームやシェイクなど、親やすいメニューも作っていかなければならないと思っています。

ヴィーガン×日本文化、インバウンド人気エリアへの進出を目指す

―編集部:今後、Righteous BURGERとしての目標や展望はありますか?

山口代表:Righteous BURGERは、海外のお客様からの反応がとても良く、インバウンドの需要がある地方都市への進出も進めていきたいと考えています。京都や奈良、城や仏閣があるエリアには外国の方が訪れやすい傾向があるので、外国の方にも日本の歴史的文化を堪能しながら、馴染みのあるヴィーガンメニューで満足していただけるよう店舗展開を図りたいと考えています。

コロナ禍で急成長した食品分野「オートミール」について

―編集部:これからオートミール事業への参入を考えている方々へ、新境地への挑戦、オートミール事業の経験をされている山口様のご経験を元にアドバイスをお願いします。

山口代表:日本ではオートミール=健康食として認知されていますが、既に日本にはヘルシーで健康な食材が沢山あるので、話題の「米化」以外にも、この味はオートミールにしか出せない、オートミールはすごく美味しいといった様な、オートミール革命が起きる商品を開発できれば、オートミールの認知拡大に繋がるのではないかと考えています。私自身、パティの素材としてオートミールを使用するまで、こんなにも沢山の種類があるとは知らず、それぞれの特徴を活かした調理方法はまだまだ多岐に渡るのではないでしょうか。素材としての使用にも、無限の可能性を秘めているので、素材として新しい取り入れ方を研究して、見つけ出す事も重要なのではないかと思います。

Righteous BURGER

公式サイト:http://righteousburger.jp
Instagram:https://www.instagram.com/righteous_burger_tyo/?hl=ja
Facebook:https://www.facebook.com/RighteousBuger

文章/小関咲穂(Oatmeal BUSINESS 編集部) 取材/渡辺恵伶奈(Oatmeal BUSINESS 編集部)写真/狭川元秀(Oatmeal BUSINESS編集部)・高尾亮太 構成/毛利努(MORRIS STRATEGY & DESIGN CONSULTS,LLC.