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きゃりーぱみゅぱみゅを発掘し 原宿カルチャーを創造、Kawaiiの名を世界に轟かせたヒットメーカーの法則とは!?「網干弓子氏×中川悠介氏」スペシャル対談【後編】
2022.12.21
ヒットメーカーの法則

きゃりーぱみゅぱみゅを発掘し 原宿カルチャーを創造、Kawaiiの名を世界に轟かせたヒットメーカーの法則とは!?「網干弓子氏×中川悠介氏」スペシャル対談【後編】

成長著しいオートミール市場を制するのは誰だ?流行を生み出した成功体験者だけが知っている勝利の法則にその答えがある!?“ヒットメーカーの法則”とは食品業界で成功をおさめたキーマンと 各界で流行を生み出したプロデューサーの会話から次の食カルチャーを創造するヒントを紐解く 至極のクロストークコンテンツ。

今回の「後編」では、前回の「前編」と語り手が交代。アソビシステム株式会社 代表取締役 中川悠介氏が“ヒットメーカー”になられるまでのバックグラウンドから、現在“ヒットメーカー”として活躍されている現状について、カルビー株式会社 マーケティング本部 オーツ麦チーム ブランドマネジャー 網干弓子氏にお話をナビゲートしていただきます。

>>>フルグラ、じゃがビーなど カルビー主要ブランドを手掛け続けるヒットメーカーの法則とは!?「網干弓子氏×中川悠介氏」スペシャル対談【前編】はこちら

―網干さん:中川社長のご出身ってどちらですか?

中川社長:東京の三軒茶屋です。

網干さん:大阪出身の私からすると、東京で生まれ育った都会っ子ってどんな感覚なのだろうって興味があります。どんな子供時代を過ごされていたのですか?

中川社長:小さな頃から、好奇心旺盛な子だったと思います。自分は東京という都会に住んでいるんだという意識はなかったのですが、家族親戚一同が東京だったので、友達の子たちが夏休みとか田舎に帰省したりするのは羨ましいなって思っていました。東京にいるとカブトムシはデパートで売っているという感覚だったので、夏休み明けにカブトムシを捕ってきていたりしている子が羨ましかったです。

―網干さん:中川社長って学生時代は?

中川社長:小中学校を通して 人が集まることがとても好きで、学級委員のようなまとめ役もしていました。

網干さん:すでに、ムードメーカー的な存在だったんですね。

中川社長:とにかく人を喜ばせたくて、高校時代は学園祭などイベントの企画をしたりしていました。

網干さん:もはや、その頃からプロデューサーの片鱗を見せていらっしゃったんですね。

中川社長:特に意識したことはなかったのですが、そうだったのかもしれません。中学は近所の友達も同じ学校で、電車で1時間くらいかけて通っていて、朝も帰りも一日中ずっと一緒だったので、濃い友達、仲間が増えました。朝6時半とか7時に家を出て、帰るのが21時とかだったので家にはほとんどいなくて、学校で仲間と生活したことの思い出の方が強いです。

網干さん:中学生にしたら21時って結構遅いですよね。

中川社長:学校行事が多かったので、企画したり、準備とかしながら、部活もしていたので、そうするとおのずと帰宅が遅くなってしまっていました。

網干さん:どんな部活動ですか?

中川社長:卓球部と、少し変わった学校で年に1回合宿があったのでその委員会をやっていました。

網干さん:どうして1時間半もかかる遠い学校を選んだんですか?

中川社長:幼稚園から通っていたんですけど、本当に自由な校風だったんですよ。制服もなくて、髪型も自由、ピアスも大丈夫で。教科書も使う先生がいたり使わない先生もいたりと、そこも自由。今は、もっとオープンになっていて教室の壁とかもなくなっていると聞いています。

網干さん:壁がないことって大事ですよね。うちの会社も社長室がないんですよ。やっぱり人に壁を作ってしまうのでオープンなことは大切ですよね。

―網干さん:影響を受けた映画や、音楽はありますか?

中川社長:映画のスタンドバイミーに衝撃を受けました。アメリカの子供達ってこうやって遊んでるんだとか、危険なこととか。あとは作中の音楽にも影響を受けたし、なにかことあるごとに見返していましたね。同世代なのに、アメリカの冒険ってすごいな!と感銘を受けました。海外ってこんなに自由なんだなって。僕も自由な方だと思っていたんですけど、海外はスケールが違うんだって思わされました。

網干さん:自由に憧れていらっしゃったんですね。

中川社長:そうですね。自分も自由な環境で育ってきたので“自由”の大切さを重視していると思います。

網干さん:実は私も割と自由な高校だったんですよ。先生がお休みになると、ブランクっていうのがあって勝手にやっていいよって感じで大学みたいでしたね。一方で、体育だとめちゃめちゃ厳しくて。とにかく文武両道って感じでした。自由って憧れますけど、責任も伴いますからね。

中川社長:自由と自己責任。名言ですね。

中川社長:話は戻りますが、中学生の頃に「AIR JAM」っていうパンクロックとラウドミュージックに加えて、BMXなどのストリートカルチャーが融合されたフェスのイベントに行ったのですが、その時に衝撃を受けて「あぁ、自分もこういう企画やイベントをやりたい!」と強く思ったことは原動力のひとつです。当時自分もバンドをやっていたので、音楽というものが大きなテーマにもなりました。

僕、人生でサラリーマンになったことが一度もなくて、自分のライフスタイルと仕事が同じ延長線上にいる感じのまま、ここまで来てしまったんです。だから職について、仕事をするっていう感覚がまったくありません。

網干さん:好きなことが仕事って大切だし、世の人の憧れだと思います。普通だとなかなか難しいことだなと。

中川社長:ありがたいことですよね。好きだから、一所懸命になれて、続いているんだと思います。

―網干さん:アルバイトは何をされていたんですか?

中川社長:年賀状配達。当時、年賀状配達ってめっちゃ稼げるいいアルバイトだったんですよ!

普段、大学時代はGAPでアルバイトをしていました。あとは、学生時代からイベントを企画実施していました。

網干さん:もうその頃から本業に近づいていたんですね。大学を卒業されてからずっと続けられているんですか?

中川社長:そうですね。その延長線上でずっと続けて25歳くらいの時に会社を設立しました。

網干さん:決意のきっかけは?

中川社長:高校時代、すでに美容師になりたいとかDJになりたいとか、アパレルのブランドをやるって子が周りにいたんですよ。僕は自分で何かをできるような手に職はなかったので、そういう子たちをプロデュースとかサポートしたいなと思いました。僕もバンドとかDJもやったりしましたが、自分が表に出たいとかじゃなくて、自分のイベントのためにやっていただけなので。

―網干さん:人生の挫折はありますか?

中川社長:挫折はたくさんありますね。失敗も沢山あります。でも網干さんと一緒で 僕もあまり挫折って思わないようにして、常にポジティブに考えています。ネガティブに考えてもどうしようもないので。

網干さん:これはまずいとか、ピンチだった時ってありますか?

中川社長:仕事だと、きゃりーぱみゅぱみゅの世界ツアーで海外に行った時に、置き引きに合うわ、入国審査が厳しいわで英語も喋れないのに色んなことが初めてで大変でした。

網干さん:アメリカですか?

中川社長:その時はフランスでした。日本みたいに荷物を置いていたらバンバン持っていかれちゃいます。悪い人ってこんなにいるんだなって思いました。

網干さん:海外に行くと、日本ってガラパゴスなんだなって感じます。私もじゃがビーの仕事や、フルグラの仕事で海外へ行く機会があるのですが、日本がスタンダードって思っているととんでもない落とし穴に出会ってしまいます。やっぱり日本は平和なので。そう考えると何もない状態から海外でコンサートをするって本当にすごいですね。

―網干さん:これまでに手がけられた企画などを教えてください。

中川社長:僕らで言うと、10年前に「青文字系」っていう言葉を作りました。

当時は雑誌のCanCamやViVi、JJを「赤文字系」と呼んでいたのですが、僕らは原宿を拠点に仕事をしていたのでZipperとかCUTiE、miniとかをまとめて対比の象徴として「青文字系」と呼び始めてビジネスを始めました。これが徐々にスタンダードになっていって、一時期マスコミを含め、みんなが青文字系という言葉を使ってくれていたので、これは嬉しかったです。

あとは「かわいい」という言葉も、それまではCから始まる「CAWAII」でしたが、当時Kから始まる「Kawaii」を世界中の共通ワードにしたりしました。「Kawaii」という言葉を広める作業は、うちのきゃりーぱみゅぱみゅも含め世界中でやりました。

網干さん:きゃりーさんって出始められた頃は「わぁ、なんだ!?」という衝撃もありましたが、段々と惹き込まれていくというか説明できない魅力がありますよね。

中川社長:先日、ケイティ・ペリーとライブに一緒にライブ出演をする機会があったのですが、ケイティ・ペリーもきゃりーのことが大好きなんですよ。そういう話を聞くと、彼女の魅力はもちろん、日本のカルチャー自体をちゃんと外国人の方も見てくれているんだなと思います。

―網干さん:ヒットを生み出した時の感覚ってどうですか?

中川社長:例えばアーティストのライブで、初回の集客は100人だったのに、どんどん1万人に増えていったりすると、その会場の景色には感動しますね。1万人、2万人、3万人と増えていくこともですけど、やっぱりお客さんの反応は一番リアルにキャッチできるし、楽しんでもらえると嬉しいです。

網干さん:私もそうです。売上ももちろんですけど、レジに並んでいる時にカルビーの商品が入ったカゴを見ると嬉しくなります(笑)

中川社長:自分達の手がけている商品とかが目に止まるとやっぱり感動しますよね。僕だと、松屋でご飯を食べている時にうちのアーティストの曲が流れると、おぉ〜って思います(笑)

網干さん:中川社長のような方でも、そんな感覚になるんですね。私も店頭で商品を並べ直したりしちゃいますよ。海外に行った時にも、訪問先に商品があるとめちゃくちゃ嬉しいです。

網干さん:中川社長の手掛けられた作品やカルチャーは私も前から知っていたものばかりだったので、その仕掛け人であるプロデューサーがどのような環境で育ち、何に刺激を受けてヒットメーカーになられたのかを直接聞けたことはとても貴重な体験でした。ありがとうございました。

―編集部:今、世界的に注目され、日本でも急成長をしているオートミールというマーケットですが、まだ日本人の食習慣には馴染みがないのが事実。どうしたら日本人に浸透するのか?新しい習慣をつくる、ヒットを生み出すというご実績のあるお二人だからこそ想像できるアイディアやヒントなどをお聞かせください。

中川社長:僕はオートミールを食べたことがないのですが、「オートミール」という言葉は知っていますし、いいものなんだろうなと思っています。健康意識の高い人とか、ヘルシーなものが好きな人の食べ物という印象はあっても、一般大衆の皆さんにまで情報が落ちてきていないというか、難しいイメージがあります。

日本ってどうしても「健康=ヘルシー、質素=意識高い」というイメージで捉えがちですよね?でも海外ってそうじゃなくて、日常の中に混ざり込んでいるんですよ。先週ロサンゼルスにいたんですけど、オーガニックなスーパーやオーガニックコーヒーとか、ベジタリアンのレストランなどが日常的にあるんです。 日本って日常と非日常が分かれすぎていている感じがしていて、それは僕らのいる原宿とかうちのタレントも突破すべき課題だと思っています。

良いものであれば、一般大衆の皆さんにしっかりと発信し浸透させることが大事。オートミールは知れば知るほど可能性のあるマーケットなんだろうなと。特定の人たちのものではないということを、しっかりと認知させれば一気に広がると思います。日常の中に溶け込ませる、非日常を日常にすることが大切ですね。

網干さん:オートミールって、世の中で物凄く流行っているものと言われていますが、実はまだまだ一部の人しか食べていないことが事実なんですよ。オートミールってなに?という人からすると、そもそも何からできているのかも知らなくて。オーツ麦という麦からできていて小麦とかお米みたいに穀物なんだという認識がないので、正しい情報の拡散が必要だなと思います。

中川社長が“日常”っておっしゃる通り、美味しいものだったり、美味しそうと思えるものじゃないと一般化しないのではないかなと思います。苦しくてストイックなものって続かないじゃないですか。だからこそ美味しい食べ方とか魅力を伝えることが重要だと思います。簡単な習慣だと思えば継続しやすいですから。

メーカーとしては、お客さまがいかにハードルなく試せるかを重要視しています。オートミールの場合だと、とにかく美味しさや正しいレシピを広めること。美味しくてさらに健康にもいいだなんて、とても幸せなことですよね。

実は弊社商品のフルグラって、30年ほど前に創業者系の者が「オーツ麦」はとてもいい素材だということを知って日本に持ってきたんですよ。

今でこそ浸透していますが、当時の日本にはグラノーラなんてほとんどなくて。でも海外のグラノーラはボソボソしており食べにくいので、それを食べやすくして広まった商品がフルグラなんです。だからオートミールも美味しくして、健康が特別なことじゃないと知ってもらえることが大切だと思います。

―編集部:貴重なご意見をありがとうございます。最後に本日のご感想をお聞かせください。

中川社長:本当に異業種で、普段だとなかなかお会いすることができない方のお話をお聞きできて、めちゃくちゃ面白いなと思いました。さっきのオートミールの話もそうですけど、僕らがタレントを売るという事と同じように、商品を売るということでも、売り方や広め方は共通なんだなと改めて実感できました。人に知ってもらうという作業が一番難しくて、大事な仕事。その人に知ってもらうことを、どう考えるかが、多分ビジネスで一番楽しいポイントであり、難しいポイントでもあるんだなと今日対談をして改めて思いました。

網干さん:私も普段だと滅多にお会いできない業種の方とお話しができて、異業種でも意外と共通することは多いんだなと感じました。実は今回オートミールでヒットを生み出す、浸透をさせるということに対して、食品業界ではない中川さんはどんなお考えなのか?を聞けるのをとても楽しみにしていたんです。やっぱり一般化するということに我々のアイデアや知恵を絞るべきだと改めて実感しました。

ライター:全く異なる業界のヒットメーカーのお二人に、異なる目線でオートミール市場の発展に関するアイデアとヒントをいただき大変参考になりました。本日はご多忙の中、貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。

網干さん&中川社長:ありがとうございました。

取材・文章/渡辺恵伶奈(Oatmeal BUSINESS 編集部) 取材コーディネート/(兼松株式会社 穀物部) 構成/毛利努(MORRIS STRATEGY & DESIGN CONSULTS,LLC.